テレワークと好相性のマニュアル作成
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テレワークと好相性のマニュアル作成

2020年02月18日(火)3:39 PM
「働き方改革」という言葉はすっかり社会に定着しましたが、労働環境の改善を求める労働者側、変わる必要性を自覚した企業側双方に共通する課題であるためでしょう。 先日、テレワークに関するシンポジウムに参加したところ、企業がテレワークを導入する一番の理由は人材確保のため、選ばれる魅力ある企業になるためでした。子育て、介護、自身の健康問題などを抱えた優秀な社員が働き続けられるように。

企業の管理職にとってテレワークは、目の前にいない社員を管理しなければならないので難しいそうです。(実際にテレワークを導入した副次的効果として、管理職のマネジメント能力が上がったというお話もありました。)テレワーク社員は1日に行う業務の目標を設定し、最後に上司へ報告をして承認を得るというやり方があるそうですが、毎日行うのはそれだけで一仕事です。

当社にこれまで在職したのはみな女性で、長く働き続ける方法を模索して30年あまりです。テクニカルライティングーー新しい技術をわかりやすくエンドユーザーに伝えるーーをキーワードに、当初は広告寄りの仕事も多かったのですが、自然の流れでマニュアル、取扱説明書作成が主な業務になりました。

どのような企業にも業務マニュアル、取引企業への説明資料、ユーザー向けのマニュアルなどのドキュメント類が存在します。長年の経験から、マニュアル作成とテレワークは非常に相性がいいと言えます。 その理由を挙げてみましょう。
  • マニュアル作成は一般業務から切り離しやすいので、テレワーク以外の社員に負担がかからない。
  • マニュアル作成はもともと数週間~数か月の工程表に従って作業するもので、目に見える成果物があるため業務管理しやすい。平日に用事があれば、その分土日に仕事をするという融通がきく。
  • 社内のドキュメント作成は社外に発注しにくいが、社員であれば特別なオリエンテーションやレクチャーが不要で、守秘義務契約もクリアできる。

  • あとは、マニュアル作成のノウハウ、使用するソフトウェアの使い方を習得すればいいのです。
    もちろんマニュアル作成なんてやりたくない方もいらっしゃるでしょうが、このようなノウハウを得ることは、その後、別の仕事を行う上でも役立ちます。文書化することによって業務を客観的に見直し、無駄を見つけ、やり方を改善することにつながる場合もあります。

    社員のテレワーク業務の1つとして、マニュアル作成を検討してみませんか?
    当社にはマニュアル作成、アプリケーションの使い方、それに子育て・介護経験があるので、アドバイスやコンサルティングができます。興味のある方は是非お問い合わせください。
    (関上 晴美)

    びっくりPL訴訟(犬ジャンプ転倒事件)

    2016年03月22日(火)4:51 PM
    PL法と取扱説明書」では、PL法により消費者がメーカー(輸入会社、販売会社なども)の責任を追及しやすくなったこと、PL法と取扱説明書との関係について述べました。本稿ではPL訴訟の具体例を見ていきましょう。

    PL法というのは、製品の欠陥により人の身体や財産に損害が与えられたときに消費者を守るための法律なので、人が被害を受けたケースが多いようですが、「犬」がケガをしたケースも報告されています。犬は「人」ではないので「財産」に入るのでしょうね。

    平成21年に提訴された事件です。「散歩中、飼い犬が走り始めたので引き紐のブレーキボタンを押したが利かず、紐が伸び切ったときに犬がジャンプした。反動で飼い犬が仰向けに転倒し、前十字靱帯断裂の傷害を負った」というのが、原告の主張です。

    「犬がジャンプした」でちょっと笑いそうになった、そこのあなた、不謹慎ですよ。自分のお子さんだったら、どう思いますか!(紐はつけないって? そうですね)

    我が子のように大切なワンちゃんが、紐の欠陥のせいで転倒しておケガをされ、飼い主はお怒りのあまり輸入販売会社に123万円の損害賠償請求をしました。
    一審の岐阜地方裁判所は、原告の請求を棄却。飼い主は控訴し、二審の名古屋高等裁判所が、被告に72万円の損害賠償を命じました。ジャンプ犬の勝訴です。won won !

    輸入販売会社にとっては、恐ろしい話ですよね。勢いよく走り出して、かってにジャンプして転んで72万円!
    紐が伸び切らないように、飼い主もいっしょに走ればよかったじゃん、手を離せばよかったじゃん、と言いたくなります。取扱説明書の書き方ひとつで、この判決を避けられたかどうかわかりませんが、「紐が伸び切ってしまうと危険である」とか「紐の引きが強すぎるとブレーキボタンが利かないことがある」とか、これから紐を輸入販売するみなさんは書いてくださいね。

    あくまで私の想像ですが、輸入販売会社が飼い主からのクレームに誠心誠意対応しなかった(したとしても、飼い主はそう思わなかった)という気持ちのすれ違いがあったのではないかと思います。お金の問題というより、気持ちの問題で提訴したのかもしれません。

    まずは、取扱説明書で対策! それでも事故が起きたら全力で謝罪! これでPL訴訟を避けましょう。

    (太田みえ)

    赤ちゃんグッズは慎重に

    2014年12月24日(水)1:09 PM
    前稿(PL法と取扱説明書)では、PL対策といっても特別なことではなく、通常の人が合理的な判断のもとで使うことを前提に、業界団体が策定したガイドラインなどを参照して、注意事項を記載すればよいということを述べました。
    しかし、とくに慎重を期すべきケースでは、PL訴訟に精通している弁護士に文言をチェックしてもらうことをお勧めしています。PL訴訟に精通しているかどうか実際のところわかりませんが、少なくとも、論理的な整合性、正確な文書作成能力を求められる高度な専門スキルをもつ弁護士に、第三者の目で取扱説明書を客観的かつ批判的に読んでもらい、具体的な指摘を受けることは意味があります。

    まだ日本では一般的ではない製品を輸入販売するケースなどは、そこまで慎重を期すべきです。本国のマニュアルを翻訳するだけでは不十分です。まだ使ったことがない製品ですから、常識のある人も想定外の使い方をしてしまうかもしれません。当社では、とくに赤ちゃんグッズ、子ども用グッズには慎重を期しています。

    育児経験のある方はおわかりかと思いますが、赤ちゃんは1人で大人2〜3人を振り回すぐらいの威力があります。空腹でもなく、暑くも寒くもなく、どこか痛いわけでなくても、快・不快の感覚がセンシティブなので、わずかに針が「不快」にふれただけで、すさまじいアラーム音を発します。このアラーム音が24時間、時間も曜日もおかまいなしに鳴り響くので、新米ママは緊張と寝不足でグッタリです。

    そんな育児の負担を軽くするための便利グッズがどんどん登場しています。抱っこひも、ゆりかご、家具、入浴用品、おもちゃなど、便利な新製品が生まれていますが、使い方によっては「不慮の事故」を招くことがあることを忘れないでください。
    交通事故を除くと、「不慮の事故死」の半数は家庭で起きています。原因として多いのは、窒息、溺死、転倒・転落です。そんな事故を招かないよう、製品に欠陥がないことはもちろん、取扱説明書での注意喚起もしっかり行いましょう。 

    (太田みえ)

    PL法と取扱説明書

    2014年08月05日(火)3:18 PM
    取扱説明書のPL対策をどうすればよいのか、PL対策をしてもらえるのか、というご相談が当社へよく寄せられます。PLというのは、プロダクト・ライアビリティ、1995年より施行されている「製造物責任法」のことです。製品の欠陥により、人の身体や財産に損害を与えたときは、メーカー(輸入会社、販売会社なども)が損害賠償責任を負うという法律です。この法律により、被害者はメーカーの「過失」を証明しなくても、製品に「欠陥」があったことを証明すれば、損害賠償を請求できるようになり、メーカーの責任を追及しやすくなりました。

    では、「欠陥」とはどのようなものでしょう?「製造物責任法」では3つに分類されています。

    1 製造上の欠陥(製造過程で粗悪な材料の混入、組立の誤りなどがあり、設計・仕様どおりに作られなかった)
    2 設計上の欠陥(設計段階で十分に安全性に配慮しなかった)
    3 指示・警告上の欠陥(製品から除去できない危険について、その危険を防止・回避するための情報を与えなかった)

    1と2のような欠陥がなくても、取扱説明書の記述に不備がある場合は3に該当し、欠陥と見なされるかもしれないのです。そのため、PL法が制定された当時は、あらゆる注意事項を書いておかないと、消費者に次々に訴訟を起こされるのではないかという不安から、メーカーやマニュアル業界の人たちは、ちょっと騒然としました。

    実際には、家電業界やおもちゃ業界など、多くの消費者を対象とする業界団体が、安全表示についてのガイドラインを作成したので、混乱はありませんでした。注意事項を「危険、警告、注意」にレベル分けし、「やってはいけないこと」「必ずやること」を明確に記載するという現在のスタイルに落ちつきました。また、注意事項を網羅的に書くことは不可能なので、通常の人が合理的な方法で使うことを前提に書けばよいとする考え方が定着しました。

    さて、最初の話に戻りますが、製品から除去できない危険がある場合は、その危険を消費者が防止・回避できるように、適切な指示を取扱説明書に書いておく必要があります。当社がその内容をゼロから作成することはできませんが、文章を適切な表現にリライトしたり、様式に則ったスタイルに編集するという意味での「取扱説明書のPL対策」は、通常の業務範囲として行いますのでご安心ください。とくに慎重を期すべきケースでは、PL訴訟に詳しい弁護士に文言をチェックしてもらうこともあります。

    ただし、取扱説明書に注意事項を書いたからといって、1と2の欠陥を埋め合わせできるわけではないので、誤解しないでください。あくまで、製品そのものが安全であること、消費者が使い方を誤ることがないように設計されていることが大切です。また、万一の事故に備えてPL保険もご検討ください。

    はじめて取扱説明書の作成をする方は、ご不安もあると思います。実際にどのような消費者からの訴えがあるのか、消費者庁と国民生活センターによる「事故情報データバンク」などの事例が参考になるかもしれません。


    事故情報データバンク
    http://www.jikojoho.go.jp/ai_national/

    製造物責任(PL)法に関する訴訟情報
    http://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_safety/other/product_liability_act/

    (太田みえ)